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【韓国の教育が危ない】 格差の地獄

 3月の第2週目にトップニュースになっており、個人的にも少し気になった韓国の教育制度における欠陥とその対処法、日本との比較についてお話します。最後の追伸で色々と想いをブチまけてます。

韓国の教育格差の実態とは? 
高所得者層と低所得者層の教育費を比較する

 

カンタンに言うと

 韓国教育部と統計庁が3月9日に発表した調査によると、調査開始以来なんと最高値の教育格差が露見されちゃいました。高所得者層と低所得者層の平均的な私教育支出にが5倍もの開きを見せました。私教育に50万円の投資ができる高所得者と、10万円の支出しかできない低所得者における経済的教育格差と言えるでしょう。

筆者の考察

 公益財団法人Chance for Childrenさんが『韓国の子どもの貧困対策の実情』というコラムを公表されています。代表理事の今井悠介さんが2018年に韓国の地に訪れ、青少年職業体験施設やNPO法人が運営するフリースクールを視察したそうで、その時の情報が詳細に記されています。今回はこの記事をベースに「韓国の教育と日本の教育の違い」を語っていきます。

韓国の貧困率は低いが . . . 

 韓国の貧困率は2015年のデータで6.9%と日本の貧困率より低い傾向にあります。2006年が10%付近だったことを振り返ると、貧困世帯への支援が行き渡りやすくなっているようで、不便なく生活できる人が多いと言えます。

 ですが、こと大学教育に目を向けた時、入学試験の受験競争は目に余るほど熾烈かつ残虐で、所得格差によって「塾に通えるか」や「親御さんの資金力」が変動してしまうのが韓国の現状です。ここで皆さんは思うことでしょう。「あれ、韓国の貧困率って低いのでは。貧困率が低い国において格差とか経済問題とかは発生しないでしょ」と。

受験システムを採用する限り、永遠不変に教育格差は露見する

 違います。受験システムは、貧困とは無縁の場所にある”相対的な競争原理“なんです。自分と他人を点数という手段を用いた相対的な基準で査定することにより、絶対的に格差が生じるシステムになっているのです。つまり、受験偏差値や点数の基準は”青天井“なのです。上層部の平均偏差値が上昇すればするほど、他の生徒が相対的に取るべき(取っていた方が良い)点数水準が、上へ上へと増えてしまうのが受験原理です。

 言い換えれば、教育投資に払えるお金を沢山捻出できる保護者が増えれば増えるほど、他の保護者が払うべき(払っておいた方が良い)金銭水準が上へ上へ上昇してしまうわけです。これは一般的に見て、教育支出の上昇が学力向上に寄与する関係(学術用語で言えば”教育の収益率”の相関関係、因果関係など)が過去の先行研究から明々白々に突きつけられていることを前提与件に話をしています。

 先ほど言った貧困率は、いわゆる絶対的貧困であって、”ここまでお金があれば日常生活が円滑に送れる”という一定水準です。なので、国の支援やNPOの支援でそのラインを超えさえすれば、絶対的貧困率は減少します。ですが、貧困率にはラインがあっても、受験競争の原理には「ココまで」というラインがないのです。「ここまでやるべき(貧困で言えば、絶対的貧困を乗り越えるためのライン)」という設定が受験産業にない限り、親の持つ金銭水準が上昇すれば上昇するほど受験で相対的に要求される学力レベルは上昇してしまうわけです。ここが皮肉な点なんですよ。受験という相対的な評価基準を採用する限り、経済的な教育投資の差による学力格差は”ほぼ確実に”発生してしまう。

韓国が採用する解決策は3つ

 じゃあどうやって解決すべきなのでしょうか。 韓国では既に各方面で是正措置が始動しています。折角なのでその一端を紹介しましょう。

 先ず「子供の情報連携」が日本と比較して圧倒的に推進されています。マイナンバー制度(住民登録制度)と電子化社会が一体不可分に連携しており、行政の部署やNPO、教育機関が相互に情報を伝達しやすい環境にあります。情報公開とマイナンバーカードの利用は日本でも敏捷に利用して欲しいところですが、昨今の政界の動向をみるに「この人達に情報を譲渡して良いのでしょうか」という陰鬱な雰囲気は否めません。しかも日本では、歴史学者の阿部謹也先生がご指摘するよう、”世間”という世界的に稀有な壁があったり、プライバシー問題には国民的な気質として非常に敏感なのです。

 続いては「スタディークーポン(学校内外ヴァウチャー)」の存在です。何ぞやという方のために説明すれば、原資を公共機関や民間機関にもち、経済的な困窮状態、貧窮状態にある子供達をクーポンだけで民間塾に通える様にさせる仕組み(クーポン制度)です。日本ではCFCという民間団体が独自で実施しているに留まっており、韓国では一般人や学校の生徒にも熟知されているそうです。ここまで見ても、韓国の教育制度には、ドロップアウトした子供たちやドロップアウトしないように子供達を後援するための受け皿や複線が多数ある印象を受けます。

 最後は『未就学児及び家族に対する包括的支援事業(ドリームスタート)』の存在です。ドリームスタートは、0歳〜12歳の子供とその両親や家庭を対象とした制度です。厳密に言えば、米国ではヘッドスタート、英国ではシェアスタートと呼称されるシステムを韓国バージョンに模倣したシステムです。①健康支援、②保育支援、③教育支援、④家族支援を中軸にしたシステムで、単独の部署や単独の組織が独立して業務を遂行するのではなく、包括的な支援事業が展開されているという部分がポイントです。正に日本でも河野太郎行政改革担当大臣が担当する「縦割り行政の打破」です。試行実験の後に行われた調査では、ドリームスタートを推進することにより、韓国における子供たちの社会性向上や学校適応力が向上したという結果も見て取れます。見習うべきところがありそうです。

 日本では2022年から、小学校に教科担任制という、全部の科目を一人の教員が実施するのではなく、役割分担による一種のワークシェアリングが制度化される予定です。ですが、コレは今回のドリームスタートとは逆進的ですよね。今までの横断的な連携を担当制に割り振ることで縦断的なスタイルに移行するので。そのため、役割分担が適切に行われることを予想しつつ、その中でも”学際的な連携“を欠かさない姿勢が今後の日本にとって大切になってくるでしょう。

情報の透明性が連携体制を生む

 今まで詳述した韓国の取り組みは(1)情報の連携体制、(2)スタディクーポン、(3)ドリームスタートという3つに集約出来ます。ここで気がつきませんか。そう、「透明性」です。日本では未だに理系文系の無為な区別がなされ、専門以外には口を出すなという前時代的を通り越してもはや滑稽とすら言える論議が延々と反復されています。専門分野以外に口を出すなと指摘する人がいるのですが、どうもおかしい。その人は直接的には(目の前にいる)発言の対象に対しそう言い放っているのでしょうが、実際は間接的に(目に見えない)非専門家にも同型の発言をしていることとなり、自己矛盾が発生するのです。言葉というのは呪文や呪詛の類も内包する側面があり、自分への戒めや他人への戒めが否応なしに発生してしまうのです。

 話が大分横道に逸れましたが、要は教育や学問に関連する分野の一つ一つを個別背反的に捉えず、各々の有機的な縫合を重要視することが日本の社会には必要ではないかということです。韓国の教育に対する考察は既に、貧困率は高いけれど受験戦争激化が激しく、その為に多方面で是正の取り組みが実施されていると示しました。ですが、私が思うにそれだけでは不十分で、その韓国の教育実践を照合しつつ、現状の日本を振り返ることが大切です。今回で言えば、韓国的な情報の透明性に基づき、日本型教育の再編成を考えるべきではないかということです。実際、日本は韓国より貧困率が高い(13.9%,2015年調査)上に、『教育格差/松岡亮二(筑摩新書)』でも口酸っぱく指摘されている通り、各年代の教育格差は世界的な平均値の周辺をゆるやかに彷徨っているのです。

P.S 追伸 〜データに騙されるな〜

 韓国って子供の貧困率は世界的に見ても低水準に算出されていて、OECD諸国の平均貧困率(13.3%)を大いに下回っているのですが、逆に高齢者の貧困率はOECD先進諸国の比較(2017年)で1位らしいです。主要因は公的年金制度の拡充で、他の先進諸外国と比較しても、未だ公的年金の普及率が53.2%周辺(2019年現在)だそうです。

 加えて、子供の貧困率が低い原因も、そもそも子供を出産したくないという親の思いがあります。なぜなら、今回の記事でも述べた通り、韓国という国は、自国民でさえ「ヘル朝鮮(Hell Korea)」という醜悪な受験戦争、偏差値至上主義、若年者の失業率増加を称した言い方がなされている国だからです。普通に考えて、子供の受験期は親御さんも精神的に苦痛を感じる場面が多いでしょうし、子供たちの就職率に関していつも頭を抱えるのは一人の人間として厳しい側面があるでしょう。

 なので、今回の記事の貧困率指標を全て当てにしてもらっては困りますし、そこにこそ「データの罠」があるわけで、むしろデータの欠陥を知れる良い機会になったとも言えます。まぁ本当に伝えたい事はそこではなく、韓国では横移動型の連携体制によって子供たちに対する教育的価値を提供できているという事実は変えられないわけなので、その部分を日本の教育行政も一度見習うべきではないかということです。例えば、待機児童問題って、地方創生には絶好のチャンスだと思うんですよね。仮に地方自治体同士で児童保護や幼児教育に関する連携協定などが締結されていれば、東京都や一都三県の中で保育園や幼稚園に通えない子供たちの家族を(メリットを数々提示することで)まるまる地方移住させ、地域税収も上昇させれれば、両親も子供を預けることができ、国家としても地方創生の一環として有益に働く。こういうミックスのシナリオを勘案すべきではないでしょうか。

 あと、長くなりますが、これは日本だけでなく韓国もそうで、受験システム基づく点数至上主義は本気で見直しましょうよ。もう持ちませんよ受験生が。昔、金属バット殺人事件という、両親が東大卒や早稲田卒に恵まれたのだけれども、結果的に受験で成就できなかった高校生が金属バットで両親を殴打して殺害したというニュースがありました。1980年に発生している事故です。こういう40年来の教訓に学び、未来のSociety5.0やAI型教育を語る前に、目の前の学習者を大切にしましょうよ。私は今月、思考力や想像力、論理的思考力をベースに鍛錬する私塾(https://emuco.jp)を立ち上げました。そこでは、一方通行型の授業ではなく、伴学(伴に学ぶ)の精神を大切にしていきます。

(文責:Masaharu Sumida @miyabi_media)

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