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『コロナ禍における教育の在り方』〜求められるのは、没頭力・言語力・本質を読む推察力〜 花まる学習会 高濱正伸代表

『コロナ禍における教育の在り方』〜求められるのは、没頭力・言語力・本質を見る推察力〜 花まる学習会 高濱正伸代表【下】

 新型コロナウイルスの感染が拡大する中、教育の世界では大至急でオンライン授業への移行が行われています。しかし、オンライン授業も諸刃の剣であり、デジタルデバイスの普及率に関係する経済格差や学力格差など、オンライン教育に対する懸念の声は後を絶ちません。

 今回は、NewsPicks THE UPDATEや多くの講演会で、教育に対する様々な提言を発信されている花まる学習会 高濱正伸代表に、コロナ禍の教育これからの教育のカタチを学びます。

 今回はインタビュー【下】となります。


本連載一覧:
・『コロナ禍における教育の在り方』 花まる学習会 高濱正伸代表【上】


Contents

⚫︎ 伸びる子どもには「没頭力」と「言語力」がある

⚫︎ 正規分布から飛び出そう

⚫︎ 表面的な部分ではなく、常に「本質」を捉えよう


伸びる子どもには「没頭力」と「言語力」がある

ーー 長く花まる学習会を運営されてきて、一番「伸びる」子どもには何が備わっているのでしょうか。

高濱代表 まず、伸びる子は「やらされている感覚」がないですね。遊びと生活の中で「お母さんこれやっていい?」と言いながら色々な事にチャレンジして遊ぶ子どもたちです。年上に生徒に「コラ!」と怒られながらも、自分は何がしたいのかを明確化し、主体的に学んでいけることが伸びるためには大切になります。

優秀の定義で言うと「集中力」も大切です。目の前のことにグーンと入っていける子どもと、一定程度の通過点でやめてしまう子どもの間には大きな差があります。「没頭力」とか「深掘り力」とも言い換えられて、毎日ゾーンに入っている子どもにとっては何気ない日常ですが、周囲からすればそこまで深く考えられるのは珍しいと思える力が、伸びる子どもには備わっています。没頭し、内省して、見えないものを組み合わせながら考える能力が大切になると思います。

もう一つ、伸びる子どもに大切なことは「言葉」です。伸びる子どもは、言葉に対する家の文化が違います。できるお子さんは「あそこはお父さんが東大を出ているから」とか「あそこはお医者さんの家系だから」と言われやすいのですが、そうではなく、お父さんが言葉に強い思いを持つ人だからこそ、自分も現世でお医者さんになれるくらいの勉強ができたという構図になっています。言語力は本当に重要で、できる子とできない子の間には大きな差があります。

例えば、親子で遊んでいる時でも、お父さんが「それは『嬉しい』ではなく『楽しい』だよ」と言い換えてあげるような習慣が大切になります。間違いやすい親子さんは「大体こんなことを言ってるんだろうな」と解釈してしまう傾向にありますが、伸びる子どもを育てるためには「子どもがこの言葉の使い方を間違ったら嫌だな」という思いを持ち、修正しながら接していくことが大切です。

ーー 花まる学習会は、まだ「没頭力」や「言語力」が身に付いていない子どもたちを受け入れられている体制なのでしょうか。

高濱代表 私たち花まる学習会は、正規分布の中で誰が来ても受け入れられるような体制を整えています。上のクラスに行ける子どもたち、何かの困難を抱えている子どもたちなど、どんな子どもたちが来ても受け入れられる組織を作ってきました。夏のサマースクールでは、7000人くらいの子どもたちが参加してくれますが、その内の700人程度は何らかの障害ないし問題を持った子どもたちです。それでも普通なのが、花まる学習会だと思います。

正規分布から飛び出そう!

ーー 少し話題が変わりますが、新型コロナウイルス感染症が流行化する前に行われていた、日本の学校教育について(小・中・高各々に対して)は、受験勉強一辺倒などという背景も踏まえ、どう評価されますか。

高濱代表 正直、中学校と高校に関しては、本当に価値があるのは「部活」だけかもしれません。実際の勉強は塾で行っている人が多いのも事実です。先生の給与のために、必ずしも必要か分からない授業が繰り返され、我慢しながら椅子に座っている生徒も多くいるのではないでしょうか。

小学校に関しては、Crimson Education Japanの松田悠介代表取締役や、教育改革実践家の藤原和博さんが仰っている通り、世界と比較すれば、日本の小学校教育は非常に高品質であると言えます。というのも、日本の初等教育は、掃除をさせたり、給食を一緒に食べさせたり、班行動を行わせたり、挨拶をさせたりする部分が世界的に注目されているのです。この点に関しては、日本が江戸時代から築いてきた文化的な継承物が残されているからだと思います。

しかし、私としては、まだまだ改善が必要だと思います。「時間数!時間数!」と言いますが、むしろ一斉授業はサッと終えて、残りの全ては議論や活動などに時間を割くこともできるのはないでしょうか。

私は、小学校の授業そのものを大きく変えたいと考えています。子どもたちが我慢して座っている場面が目立ち、ちゃんと座ってなさい!という先生の押し付けが発生しています。

日本の小学校は昔から「差をつけない教育」や「平等」を偏重してきたのですが、本当はもっと、最初に設定された正規分布からドンドン飛び出しても良いと考えています。最低限のラインとして「全員が前に進んでいること」を保証しつつ、天才は天才なりに前に進ませるべきなのです。

私が出演しているNHKのラジオ番組でも「筆順は子どもに教える必要はありますか」という質問に対して、医者の稲葉可奈子先生が「医者で字が綺麗な人はいない」と回答されていました。本当にその通りで、大人になったら最低限配慮できれば問題のない事柄に対して、なぜ子どもたちだけが強引に筆順や止めや払いを習う必要があるのでしょうか。

先生が子どもたちを管理しやすいから、とも推測できます。例えば、「かけられる数・かける数」に関しても、かける順番を間違えたらバッテンを貰うような光景が実際にあるのです。このようなことを実施しているのは、世界中で日本だけです。小学校の間だけそのような規則がまかり通っている現状はもう一度見直すべきではないでしょうか。

ーー 言語に関して、実社会に出て必ずしも必要ではない「非本質的な指摘」をしてしまう現状は、教える側の先生が過去に「本質を捉える練習」をしてきていない事も一つの要因かもしれませんね。

高濱代表 一人ひとりの先生は本当に良い方々ばかりで、人間的にも穏やかな方が多いのです。ですが、組織としてがんじがらめになってしまっているので、そこから抜け出す必要があると思います。

表面的な部分ではなく、常に「本質」を捉えよう

ーー 先生方にも、本質的な部分を見抜く(字面などの表層部分だけを見ない)ことが要求されてきますね。

高濱代表 世界は「本質を見る人」と「本質を見ない人」で分かれています。

本質を見る人は、メディアアーティストの落合陽一さん、ヤフー株式会社CSOの安宅和人さんなどが代表的です。一方で、本質を見ない人は、些末な事を言って人の揚げ足を取り、人のマウントを取ることだけに終始している人が多い印象です。数としては、後者の人の方が多いのが現実です。

なので、特に若い人たちは「結婚って何だろう」とか「勉強って何だろう」と考えて哲学し続けることで、自分なりの本質的な正解・言葉を生み出すことが大切になりると思います。与えられたスケジュールを淡々とこなし、良い点数を取ることだけを考えるのではなく、意識的に内省の時間を組み込むことを意識してほしいと思います。現実として、回り道組でも大成している方はたくさんいらっしゃいます。

ーー その様な「非本質的な議論」をしてしまう現状は、教育委員会や自治体、子どもたちや親御さんなど、どの機関・組織・人物が主因となっているのでしょうか。

高濱代表 これは奥が深い問題ですね。

以前に他のメディアでも寄稿したお話ですが、「先生自身が変わりたくなる仕組みづくり」が大切だと思います。改革が実行できる学力と、本質を見れる力を持った人たちが教育の世界に集まるのです。その次に、各々が先生となって「やり方は自由です」と設定しつつも、結果には責任を持ってもらうという形態でも良いのではと思っています。そうなれば、研修に積極的に出向かれる方も増えるでしょうし、良い施策をどんどん取り入れようとするはずです。

しかし、今は「AとBとCをやりなさい」という一方的な指示が山積みになっていて、現場の教員の方々は非常に苦しんでいます。根本から変革する必要性があるのです。

ーー 日本全体の教育改革はかなり時間を要すると思うのですが、だからといって、今まさに過渡期にいる子どもたちを放っておいて良いとは思えません。従って、時の間(はざま)に立っている現役生徒やその親御さんは、メソッド(方法論)として、この様な状況下において、どのように学校と付き合っていけば最良なのでしょうか。

高濱代表 今の岩盤的な教育の中において、一定数の親御さんは、自力で良い民間の学校を探しています。例えば、スイスに子どもを送り出すご家庭であったり、ホームスクーリングを積極的に活用したり、従来の学校を過度に信用せずに自力で動いている人たちがたくさんいます。そこまで極端な行動ではなくとも、全てを学校に任せるのではなく、自分たちで判断を下していくべきでしょう。

昭和だとかなり批判された事かもしれませんが 、「休校措置によって夏休みに順延された学校と、花まる学習会のどちらを取りますか」という選択に迫られた時、「サマースクールを取ります。私たちはそちらの方が大切だと思うので」と言える気概が大事だと思います。四方八方で自力の決断が迫られる時代なのです。

皆と同じように学校へ全てをお任せし、横並びで整列する時代は既に終わっているのではないでしょうか。

ーー 安宅和人先生も自著『シン・ニホン』の中で指摘されていますが、ゲームを受信者としてのみ享受し、没頭するのは、ただ制作会社の掌(てのひら)の上で転がされているだけにすぎず、自分の能力を市場経済の中でいかに差別化できるかを念頭に置きつつ「没頭力」を育むべきだと思います。なので、「子どもの市場における差別化」を緩やかに誘導できる能力が今後の親御さんに要求されると思うのですが、いかがでしょうか。

高濱代表 それは本質をついていますね。余裕があれば、読者の方にも安宅先生の本を読んでほしいです。

『シン・ニホン』は本当に名著です。私が彼にインタビューした記事が今年(2020年)の秋頃に公開される予定なのですが、彼は、富山の田舎で毎日釣り漬けのお父さんの下で釣りばかりをして育ったらしく、当時は釣り以外何も知らないレベルだったらしいのですが、「釣り」は彼に対して様々な能力を鍛えてくれたのです。

自分で魚を釣るため、曲がりなりにも試行錯誤し、「高いお金を使って料亭で食べる高級魚より、自分で釣った魚の方が美味しい」と言える人生になったりします。目先のお金が全てではないという事を彼は知っていた遠思いますし、何より自然の中で暮らしていたので、イメージする力が桁外れなのです。

ーー もし仮に今、高濱先生が小学生なら、今ある学校、あるいはこんな学校に通いたいなという理想はありますか。

高濱代表 私は、かつて育った田舎の小学校でも充分満足です。しかし、現在の花まる学習会が行っているような、もっと自由に「深掘り」して物事を考える時間を持ちたかったとも思います。当時の「ここまでできれば十分」という基準が今考えると凄く低い設定になっていたので、非常にもったいなかったなと感じています。

当時の先生は、たまたま上手く私の学びを導いてくれて、中学受験をするつもりは全くなかったのですが、中学受験の問題集やテキストを取り寄せてもらい、目標も何もない状況の中、ひたすらパズルとして解いていました。答えを見ずに解いていたので、そこではメチャクチャ鍛えられました。そう思うと、その時間は私にとって大きかったと思います。今の礎は、あの時間に形成されたのだと思います。

自分の世界に没入し、物事を深く考える時間を、今の子どもたちには取ってあげたいなと思います。

ーー 教職員の多忙化問題も取り沙汰されていますが、「集中的に考える時間」は優先して確保したいですね。

高濱代表 大切なのは「差がついても良い」という前提に立つ事です。冒頭でも申し上げましたが、先生の裁量で授業は自由に作って良い、という体制にできれば素晴らしいなと思います。そうすれば、先生になりたい人材も増加するでしょうし、付随して給料も上げられれば、現場の方々が教師という職業に誇りを持てる雰囲気も作れます。

今は、親御さんが望むので、公務員や一流企業の社員になろうと努力する日本人が散見され、一概に全てが悪いとは言えませんが、一番クリエイティブな「教育」という場所に十分な人材が集まっていません。私は、教育が一番重要であると言い切っても良いと、心より信じています。

(取材:角田 雅治 @miyabi_media
(記事画像:射落美生乃 @00trans_


〜 高濱 正伸(たかはま まさのぶ) プロフィール 〜

 高濱 正伸(はなまる学習会 代表)

花まる学習会HP:hanamarugroup.jp

Twitter:@19590314

・1959年熊本県人吉市生まれ。
・県立熊本高校卒業後、東京大学へ入学。
・東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。
・花まる学習会代表、NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長。
・算数オリンピック作問委員。日本棋院理事。

『情熱大陸』『カンブリア宮殿』『ソロモン流』など、数多くのメディアに紹介されて多くの反響が寄せられている。週刊ダイヤモンドの連載を始め、朝日新聞土曜版「be」や雑誌「AERA with Kids」などにも多数登場。ニュースキュレーションメディア『NewsPicks』のプロピッカーを務め、NHKラジオ第一『らじるラボ』の「どうしたの?~木曜相談室~」コーナーでも第2木曜日の相談員を務める。

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