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『教えないで、教える 〜世代を超えたカフェの寺子屋〜』Cafe de 寺子屋 大石紗矢香代表 インタビュー

大石紗矢香 ~ Ohishi Sayaka ~

 <Profile
特定非営利活動(NPO)法人 Cafe de 寺子屋代表理事。キャリアインカレ2019 ファイナリスト。静岡県藤枝東高等学校を経て、静岡大学に入学。現在は東京大学大学院在籍。営業時間外のカフェを貸し切り、小中高生への学習支援を展開する。同団体のミッションは、自由な学びの先にある「すべての価値観が尊重される中で、自分自身で判断し言動を選択できる社会の実現」で、2022年3月までに日本全国47都道府県に寺子屋を創ると宣言している。

 <SNS・HP
 ・大石代表 Twitter:@oishipeas
 ・Cafe de 寺子屋 HP:cafe-de-terakoya.or.jp


 未曾有のパンデミックが日本全国に波及した只中でも、精力的な学習支援を続けている『Cafe de 寺子屋』をご存知でしょうか。Cafe de 寺子屋では、営業時間外のカフェを貸し切り、小中高生の自立的な学習を大学生がサポートします。

 2018年4月に山梨県甲府市で活動が始まり、2020年4月に学生団体として再始動したCafe de 寺子屋は、山梨県甲府市、静岡県焼津市、浜松市の3拠点に寺子屋を設置しており、2022年3月までに47都道府県に寺子屋をつくることを目標にしています。

 そして今回、「教えないで、教える」という学習者主体の学びを重要視し、大学生メンターとともにコロナ期間中も学習をサポートするCafe de 寺子屋の大石代表に、Cafe de 寺子屋の近況や今後の展望、代表ご自身の教育に対する考えをお伺いしました。


Contents

コロナという災禍に立ち向かう寺子屋 〜学習者にプレゼントを〜
学習支援では「同じ場所を共有する」ことが大切になる
地域共同体は、信頼関係から始まる
教育は特定の人のためではなく、社会全体のためにある
農学の世界では大量の肥料を使用せず、有機農法で自然に育てることが大切である
子供の自発的な気づきを “待つ” ことが大事 〜自分で気づく〜
異年齢の構成だからこそ、学習意欲が湧いてくる 〜私もやらないと!〜


コロナという災禍に立ち向かう寺子屋 〜学習者にプレゼントを〜

ー 2020年4月、新型コロナウイルス感染症が到来する只中で創設されたCafe de 寺子屋さんですが、当初想定していた理念やアクションは順調に実現出来ているでしょうか。やはり感染症の影響は大きいのでしょうか。

 私たちは「2022年の3月までに47都道府県全てに寺子屋を作る」という目標を最初に決めました。ですが、現在の拠点は2県に3つのみで、思ったよりも進んでいない状況となってます。メンバーは7都道府県に60名いるのですが、メンバーがいる場所でさえ、コロナの影響でなかなか場所が借りられない状況です。なので、拠点の数でいうとまだまだですね。

 教育の内容に関しては、「教えないで教える(自発的な学びを引き出す)」という理念に加え、子供たちの学びにプラスアルファして大学生の側からも学びのキッカケを提供したいという意味で「プレゼント」という言葉も掲げています。ですが、後者は特に難航しています。学生自身も「プレゼント」のような教育を受けたことがないので、実践できる人がまだまだ限られているのが現状です。

ー 「プレゼント」という概念は非常に面白いですね。完全には教えないけれど、新たな気づきやキッカケを与えるのですね。実践出来る人が少ないとのことですが、出来る人に関して、実際に成功したプレゼントの事例などはありますか。

 具体例で言うと、例えば、小学生は毎日書き取りの宿題が出るのですが、「魚に塩を振る」という言葉が出てきた時に、何で魚に塩を振るか知ってる?と聞いてみたり、理科など別の教科に結びつけることを行っています。その際は、あくまでも解答を与えず、促す方法をとっています。

ー コロナウイルスのお話もあり、拠点が増えないとのことですが、大石代表は寺子屋の拠点数が増加していかない要因はどこにあるとお考えでしょうか。

 1つは、コロナ禍の影響により、飲食店に子供を入れるのが難しいことですね。2つ目には、メンバーがまだ主体的に拠点作りに動き出せていない状況があります。後者に関しては、メンバーが悪いわけではなく、組織の基盤がまだ整っていないので、やる意欲はあるけどどうしたらいいかわからないという状態になっているのが問題ですね。

ー メンバーの意識向上に向けて取り組まれている事はありますか。

 まさに今、改革を行ってるところです。今までは、ボランティアをただやりたいという人と、拠点作りも運営もやりたいという学生が混ぜこぜの状態でした。やりたい人は動き出せず、ボランティアをやりたい人も何か場違い感ある状況になってしまっていました。ですが、今後は「運営と戦略」「現場で子供たちと触れ合う」という形へ明確に分けていきます。

ー Cafe de 寺子屋さんは大学生メンターを中心に運営をされていると思いますが、あえて批判的に見ると、大学生で大丈夫なのかな、質の担保はどうするのか等々の疑問が浮上します。大学生の学力や指導力を担保する為に指導の研修会を開いたりなど、ここまでは学力水準を高めてほしいなどの具体的な数値目標の設定は行われているのでしょうか。

 研修に関しては今まで何度も行ってきました。数値目標に関しては、先程も述べた組織改革と一緒に並行して作っていこうと思っています。例えば、子どもたちの休憩の回数を減らしていくことなどです。学生に関しては、大学1年でこの団体に入ったとして、2年になるまでには子供の観察ができるようになりましょう、2年から3年になるときには教えないで教えられる様になりましょうなど、ステップを踏んで、成長できる基準があれば良いと考えています。

全体研修会を行うCafe de 寺子屋のメンバー

学習支援では「同じ場所を共有する」ことが大切になる 

ー 現状、未曾有の感染症が波及したことにより、時間外のカフェを貸し切るような活動が行い難くなっているのではないかと思います。コロナウイルスの最中、子供達と共に学ぶという観点で、厳しいと感じる点や困難な点はありますか。

 少しソーシャルディスタンスの確保が曖昧になっている感は否めませんが、コロナによって困ってるってことは特にありません。学習支援という観点から考えると”一緒に同じ場所を共有する”というのは凄く大切だと思います。なので、一方的に教える形だったらオンラインでも全く問題ありませんが、私たちの教育支援は”対面ならでは”なのだと思います。

ー 寺子屋では、大学生の指導や伴走的な学習がコンテンツになっていると思います。一方、昔の寺子屋だと、書物が陳列されていたり、非人間的なコンテンツが保存されていました。ですが、Cafe de 寺子屋さんの場合、営業時間外のカフェを借りるので、毎度書籍を持っていく事は現実的ではないと思います。

 私たちの方で教材を用意することは特になく、各生徒が持ってきたものを一緒に解いたり考えたりします。提供できるコンテンツと言えば、やはり学生になってくるのかなと思います。なので学生自身の知識に依存する部分もあります。でもだからこそ、学生たちも常に学び続ける姿勢を維持できるというメリットもあります。まずは学生が学び続けるというメッセージを今後も発していきたいと思います。

ー Cafe de 寺子屋さんは地域共同体や地縁共同体が徐々に消失する現代社会の中で、学校教育と家庭教育の狭間にある中間的なポジションを確立されていると思います。そして、現在の日本で言えば小学校に敷設される学童保育が相似的なポジションに当該すると思います。Cafe de 寺子屋さんは、ある種、既成学校の受け皿も担えるのかもしれません。

 そうですね。ですが、学童のように「遊びの中で学ぶ」という形は今のところ考えていません。あくまでも、生徒自身が勉強したい事柄や、学びに集中できる空間にしていきたいですね。

 寺子屋内では座学だったり、大学生との対話を通した学びが軸になります。もし子供が「山で学びたい!」と言った場合は、イベントとして行うのはありかなと思っています。

静岡県焼津市にある寺子屋の学習風景

地縁共同体は、信頼関係から始まる 

ー 「家庭教育と学校教育の中間的な役割」を担う為に、授業外での繋がりや交流機会を作られているのでしょうか。

 現在は実現できていませんが、最初期に完成した寺子屋のが最も理想的な形だったと思います。お子さんとも寺子屋外でLINEなどで相談を受けたり、寺子屋の後に相談があると来た子と一緒にドライブを始めたり。信頼関係が築けていましたね。保護者さんとも寺子屋の時にお話したり、年末には一緒に飲みに行くなどの関わりがありました。ですが、以前行われた代替わりの時から、少し薄れていった気がします。

 そのような環境を取り戻すために、まず、いきなり寺子屋外で関係を深め合うのは難しいと思うので、寺子屋にいる時間、一緒に共有した時間の中で、少しずつ話をして、信頼関係を築くのがまずは大事だと思っています。今は勉強を見てお終い、となっている子が学生の中でも多く、まだまだこれからだと思っています。

ー 「大学生」というと、子供たちからしても非常に寄り添いやすい、親近感のある存在だと思います。一方で、知識という観点からみると大学生がメンターを務める場合はやはり不足する部分あるのではないでしょうか。

 それは仰る通りです。実際、大人の方で「協力させてください」と言って下さる方々もいます。しかし、あくまで大学生と子供だけの空間にしたいと思っています、大人が入ることで学生自身もやりにくい感覚が出てきてしまう場面があったりするのです。

 子供と大学生だけの、彼らならではの空気感を大切にしていきたいですね。知識が豊富にあることというより、子供の横で大学生も共に学んでいってほしいですね。

ー Cafe de 寺子屋に入った大学生は、どういった形で活動に参画されるのでしょうか。

 例えば、寺子屋がある地区のAさんだったら、毎週1回は寺子屋で活動しているので、それに参加し、保護者さんとの連絡も行います。寺子屋での活動の他には、交流会や研修会、会議などが2週間に1回程度は平均してあるので、それらにも出席していますね。寺子屋のない地区もあり、そこの学生は拠点作りのためにカフェに交渉に行ってたり、会議に参加しています。

教育は特定の人のためではなく、社会全体のためにある 〜ボランティアを中心に〜

ー Cafe de 寺子屋さんは現在、NPO法人としてのボランティア活動を中心に子供達の学習支援を行なっています。そんな中、ボランティア活動は自律的な収益構造を発生させられない為、継続性の面で困難な点があると思うのですが、いかがでしょうか。

 基本的に、寺子屋での活動にはほとんどお金がかかっていません。場所代も払っておらず、完全に無償でお借りしてます。交通費も運営側からは支給をしておらず、皆が自発的に参画してくれています。今、お金を使ってるのは、チラシや学生の会議を開く時の会場費、オフラインで集まる時に払う交通費などです。

 お金がなくなった場合、学生自体への研修を介した教育の部分がちょっと弱くなってくるのかなという懸念はありますが、やはり教育に関する活動は、子供のためだけではなく、社会のため、全ての人の利益になるものだと思うので、一定の人からお金をもらうのではなく、全員が寄付を行なって作り上げていくのが理想だと思います。

山梨県甲府市にある寺子屋の学習風景

ー 素晴らしい理念ですね。Cafe de 寺子屋さんは60名のメンバーが既に所属されています。運営する主体としては、どこに魅力のポイントがあると思いますか。

 実は、私としてもすごく不思議なのです。立ち上げて、2週間足らずで30名が集まりました。コロナ禍で団体を新設する事例が珍しかったこともあるかもしれません。

 他には、私たちは途中でミッションを変えたことがあります。最初は全然違うミッションで、1ヶ月後ぐらいに変更し、そのミッションを変えてからは「そのミッションに共感しました」と言って入れてくれる学生がかなり増えましたね。

ー Cafe de 寺子屋さんの一番の拠点は「カフェ」だと思いますが、カフェに対してアプローチする時に重視する”ココが大切!”という行動や意思表明のメソッドはありますか。ある種の「交渉力」がないと複数の寺子屋を展開することは出来ないと思います。

 今は3つの拠点があり、今後も新しく2つできる予定ですが、そのうちの3拠点は店主さんの側から「使ってください」と言って頂いたので、実は交渉で成功したのは2拠点だけなのです。

 店主さんからご依頼を頂いたのは、メディアで取り上げられたり、ラジオや新聞を見てぜひ私のところでもぜひという流れでした。他の拠点では「地域に貢献したい」という思いの強い店主さんがいたり、少しお話ししただけですぐに賛同してくれる方もいましたね。

農学の世界では大量の肥料は使用せず、有機農法で自然に育てることが大切である

ー 大石代表の学生生活や今後に対する思いをお伺いしたいのですが、大学院では具体的な研究内容として、どの様な事柄を追究されているのでしょうか。また、大学院での研究内容とCafe de 寺子屋での活動のあいだにおける相乗効果などがあるのでしょうか。

 専攻は農学です。寺子屋との関係性については、「有機農法」という考え方が寺子屋に反映されてる部分はあります。肥料を大量に使用して育てるのではなく、自然に育てる有機農法を重視しています。

 このあいだ『エミール/ルソー(岩波文庫)』を読んだ時も、「放任主義でも子供は育っていく」という意見を目にし、変に教育システムを改革して変な価値感を植え付けるより、普通に生活させて必要なときに必要な知識を学んでいく方が良いのだと思いました。

ー 現在のCafe de 寺子屋さんは大石さんがトップで主導されている組織構図なのでしょうか。それともボトムアップ的にチームメンバー主導で動かれているのでしょうか。

 開始当初は私が権限を持ってトップダウンの形で活動していましたが、ミッションを考えた時、対外的には「他者尊重」と「主体性」というミッションを掲げているにも拘らず、運営側はトップダウンでいいのかという疑問を抱えました。

 なので、それはやめようということで”ティール組織”のようなメンバーが主体的に動く組織に変えようと、現在試行錯誤しています。

子供の自発的な気づきを ”待つ” ことが大事 〜自分で気づく〜

ー 大学生と小中高生の関わりという意味で活動を敷衍される中、大学生の方が何か気づかされたことや学んだことはありますか。

 私は今まで教えるのは得意な方だったと思うのですが、寺子屋の創設者の方が「教えないで教える」のが非常にお上手で、その方を見る、まだまだということに気付かされます。

 子供に関しては、何か質問をした時、外から見るとマイペースに思える一方、実際は何かしら考えてるんですよね。でも、反応がない時もあるので色々と質問したくなります。ですが、そんな時こそ”待ってあげること”が大切だなと感じています。成長すれば、途切れなく円滑に会話をすることがだんだん多くなっていきます。でも、耐えてあげることでこそ「自分で消化する経験」を踏むには大切なのだと思います。

ー Cafe de 寺子屋さんに通われる小中高生の特徴や、強み弱みなどはありますか。

 色々ありますね。例えば、凄く静かに寺子屋に来て黙々と勉強し、終わったら早めに帰る子もいたり、少しだけ寺子屋で勉強して後は友達と一緒に何かを競い合うかのようにバーっと散っていく子供もいます。周りを巻き込むのがうまい子や、逆にエゴが強過ぎて心配な子もいます。

 それでも、大学生が外から不要に介入することはなく、遊びが盛り上がり過ぎる時はさすがに周囲の子に迷惑になるので抑制する場合はありますが、あくまで見守っています。

ー 数々の歴史的文献が示唆する通り、江戸時代が発祥の「寺子屋」は現行の学校教育制度の様な一方通行型ではなく、1つの部屋の中でも皆が分散的で、自律学習が多い場所だと思います。その点に関し、空間作りの部分で意識されてるポイントやこの様なカフェ作りが出来たら良いなという意識付けはされていますか。

 大きい机があるといいですね。個別の机じゃなくて、皆が視界に入り、頑張ってる友達の姿が見えるぐらいの距離を保てると素晴らしいですね。最低限、禁煙専用の場所やトイレが敷設されているという要件は必須です。

異年齢の構成だからこそ、学習意欲が湧いてくる 〜私もやらないと!〜

ー Cafe de 寺子屋さんは基本的に異年齢からなる空間で、小中高生が同じ空間で学び合います。一番離れている年齢差はいくつ程度なのでしょうか。加えて、異年齢構成の学習スタイルであるがゆえのメリットとデメリットをお聞かせ下さい。

 今までで一番離れていたケースは、小2と高3だったと思います。同じ机で異年齢が学ぶことは、メリットの方が多く、高校生のお兄さんが小学生の子に教える場面もありますし、小学生も受験生のお兄さんがバリバリ机に向かって勉強している姿勢に刺激を受けて「僕私もやらないとダメだ」と意気込んでいる場面が見られます。

 逆にデメリットとしては、低学年の子供と勉強する中で、高校生のお兄さん達が自分の勉強に集中出来なくなる側面がありますね。

ー 今回は、根掘り葉掘り貴重なお話を、本当に有難うございました。Cafe de 寺子屋の更なる発展を応援しております。最後に、コロナ禍でも懸命に学習に取り組む小中高生に向けて一言メッセージを頂けると幸いです。

 コロナ禍で慣れない生活を迫られる中でも、変わらず学び続けるのには様々な苦労が伴うと思います。

 困った時には周りの大人、お兄さんお姉さんを頼ってください。

 私たちは、学びたい子どもたちの味方です!


(取材:Masaharu Sumdia)
(Design:射落美生乃)

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