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【造船疑獄事件とは何だったのか】サクッと雑学思考

 雑学紹介シリーズ雑学思考では、雑学を単なる雑学で終わらせず、既存知(知っていること)とを自分独自で「統合」し、「思考」するプロセスを重視しています。学校や塾の授業で使ってみてね。知って終わりを卒業し、知って・・・知って・・・もっと知って・・・・・・、最後にメチャメチャ考えよう!
※下線部の付いているワードはクリックすると簡単に意味を閲覧できます。「ポップアップミーニング(造語)」と言います。


 今回は造船疑獄事件を取り扱います。非常に熱く、かつ難易度の高いトピックなのですが、日本の政治経済界における特異性や特有性が見て取れる素晴らしい歴史的な事例だと思いますので、是非ともご一読下さい。

 先ず、造船疑獄事件の概略を一言で説明すると、第2次世界大戦が終焉した日本国において、計画造船に関する利子軽減のための外交船建造利子補給法の制定請願を論争し合った贈収賄事件です。

 読者の皆様は確実にピンときてないと思いますので、今から理解していきましょう。

Ⅰ 造船疑獄事件の背景 〜とりあえず簡単に説明してください!〜

 第2次世界大戦終焉後の日本国内では「戦争のせいで日本の船が壊滅的な状態になってしまっておる。船が足りんのじゃ。どうにかせねばいかん」と語る政治家や官僚たちが大量に顕現してきます。先の戦争で日本国は敗戦し、ハワイ真珠湾攻撃を筆頭に、数多の戦死者と数多の軍事的損失を背負っていました。当然、その中の主力部隊だったも壊乱的な打撃を被ることになります。

 振り返れば、第1次世界大戦の頃の日本国は船成金という名前も流布するくらい、各地で造船が自由闊達に行われ、船を造る産業は国の主要産業とも認定出来るレベルにまで発達していました。しかし、前述した様に、第2次世界大戦で日本は破滅的な衝撃を喰らい、戦争終了間際には長崎、広島に2発の原子爆弾も被ったわけですから、国家的損失量は莫大です。

 そして、その損失を回避する為に時の政府が主導した施策こそ、造船だったのです。当時の首相であった自由党総裁の吉田茂総理を先頭に、第1次世界大戦の時のような素晴らしい造船産業を再起するぞ!取り戻せニッポンのお船!という政治戦略が始動します。この時に吉田茂総理を代表とする自由党の議員やその他の官僚たちは、後方支援やバックアップしたい造船業者に対し、本来は造船業者側が負担するはずの資金を満場一致で政府が負担する方針に転換し、銀行でもっと融資を受けてこい!と造船業従事者の人々を勇気づける法律を立案するのです。その時に成立した法案が外航船建造利子補給法です。

 ここから、政府、造船業者、有権者たちの熱き造船業復活へのサクセスストーリーが胎動するはずでした。

Ⅱ 造船疑獄事件勃発・特捜部捜査 〜ボカーン!バチコーン!ついにボッパーツ!〜

 実は、吉田茂さんの造船事業者を優遇する金融緩和政策・財政出動措置に対し、陰ながら応援したいという意思を持つ造船業の裏方たちが、政界人官僚などに裏道ルートを活用した賄賂を働いていた事実が判明したのです。これにて、吉田茂総理を筆頭とする造船業大改革運動が頓挫してしまいます。どう考えても早過ぎますね。鉄は熱いうちに打てとか言いますが、熱い時間が短時間過ぎたらどうしようもないのです。

 そうしているうちに、東京地検特捜部を中心とした海軍造船業界幹部の逮捕が始まります。もう捜査?早過ぎますわ!と言いたいところですが、罪は罪ですから。東京地検特捜部の調査は大野伴睦の取り調べから始め、有田次郎などの国会議員4名の逮捕を経て、一層と調査対象を拡大しようと多種多様な考案を提示していきます。

 しかし、検察や特捜部側の特殊捜索は止まるところを知らず、1954年には、当時の与党であった自由党幹事長の佐藤栄作(安倍総理の叔父)が、第3者収賄罪の容疑によって逮捕されかける事態に発展していきます。事件との直接な関係性がそれほど垣間見えない人に対しても、検察側は手当たり次第に容疑の罪を被せていたのかも知れません。

 そこに正義感あふれる逸材が登場します。犬養健、当時の法務大臣です。犬養は「重要法案(防衛庁設置法自衛隊法)の審議中である」という名目のもと、検察庁法第14条による指揮権を発動するのです。そして直後には、歴史上稀有にもほどがあるこの行為によって、辞任してしまいます。

 犬養のドラマを簡単に要約すると、当時の検察は常時拡張的な捜索活動を推進し、内閣からすれば必要以上の捜索を繰り返し続けていたので、「アイツ(佐藤栄作)は吉田茂兄さんが可愛がっとった一番弟子なんやぁ、もうこれ以上は蛇足な捜査をするんじゃないよ!」と検察側の調査を停止させたのです。実際は、裏側で吉田茂さんが犬養さんに色々と圧をかけていた模様ですが。

 結局、5回も総理大臣に就任した吉田茂の内閣は最期の時を迎えます。民衆が一般人なら普通逮捕されるやろがい!と罵声を放ち、有権者側からの支持率が圧倒的に低迷したのです。さらに、吉田茂内閣は当初からワンマン経営者という、悪意も込めたニックネームがつけられており、自民党内部にも反発分子が存在していたようなのです。

Ⅲ 造船疑獄事件のその後と各地での論評 〜ちょっと政府が介入し過ぎやない?〜

 ここまで、造船疑獄事件の背景と吉田茂内閣の倒閣までをレビューしてきましたが、当時の逮捕者数は全体で71名に昇り、35人もの政界関係者が起訴されています。12名が執行猶予付きの懲罰形を喰らい、2名は罰金刑を受けたそうです。

 事件後に話題となった政府批判としては、検察というのは基本的に独立した法律系組織ですから、政府側が何かイチャモンをつけて強制的な意思変容を促すことは芳しくありません。当時の定義でも、起訴の権限を独占可能な検察官に対し、選挙プロセスや民主的制度を経た内閣の一員として法務大臣が”チェック”するという権力構造に過ぎず、度を超えた介入は否定的に受け止められたのです。

 ですが実質、後世の調査によれば、検察の内部で証拠評価などをめぐる一連の論議を経て、強行捜査をやめない東京地検特捜部を危険視した検察側が、実は方略的に政界の人物に対して指揮権発動を促進したという事実が見て取れるのが面白いポイントです。証拠や証左は、人々の憶測だけでは推測し切れない、こんなこともあったのかという秘話を教えてくれますね。

 今回の事件では、特に、犬養毅と吉田茂、佐藤栄作の間の人間関係が面白いです。政治はよく「3バン = ジバン(地盤)カンバン(看板)カバン(鞄)」が必須だと言われますが、何十年もかけて形成し続けた強固な絆と紐帯感、結束感は意外と面白く、一種のドラマのようです。民主主義の根底要素を成す三権分立的には全く宜しいことではないのですがね。

【シンキングタイム】

 では最後に、記事を一読した後、ただ一読するだけで終わらず、立ち止まって考える時間を設けてみましょう。例えば、読後の探究に役立ちそうな質問の例をあげてみます。

⑴ 吉田茂さんはなぜ造船業者たちからの熱烈な賄賂提供を断らなかったのか?人間関係の苦悩なのか、そうせざるを得ない理由があったのか?権力は絶対的に腐敗するからなのか?

⑵ 指揮権という定義について再度考えてみよう。検察とは何か、法務大臣との関係性はどうか。日本の司法制度について調べてみましょう。

⑶ 第1次世界大戦と第2次世界大戦を隔てた大きな根拠は何なのか?日本軍は第二次世界大戦で何をなし、どこで失墜したのか?(日本史、世界史の基礎知識をインプットしよう)

⑷ 吉田茂はなぜワンマン政治家だったのか?その後に結成された日本民主党は、時の与党 自由党と何が異なったのか?(政党の略図などをチェックしてみよう)

⑸ 造船疑獄事件で容疑が発覚した逮捕者たちの行方はどうなったのか?娑婆(シャバ)に復帰した人はいるのか?いたとしたら何を発言しただろうか?

【補足】

・指揮権発動は内閣総理大臣の人間が、司法トップの検察庁に対して物言いを繰り出す行為ですから、日本国の民主主義的統治体制である三権分立は一度瓦解したと解釈することも可能です。いくら一番弟子のような存在だったとしても、戦後の三権分立体制を倒壊させてまで指揮権を発動してよかったのか?と。日本は現在に至るまで検察権限が非常に堅固ですよね。

→ 昨今では#検察庁法改正案が話題となり、有望株であった黒川検事長に対し内閣が止まっておいてくれぇと違反行為を働こうとした大事件がありました。結局はTwitterで世論の反撃姿勢が高騰し、失態となりました。

・当時の日本は、造船業になぜ傾斜配分的な財政リソースを割く必要性があったかというと、日本は基本「島国」だからです。これがことヨーロッパ圏内の話の場合、現代的なEU圏域やその他も地続きで輸出入のルートを確保可能なので無問題なのですが、日本は航海技術を否応なしに要求される立地の国家なのだという事実を忘却しないようにしましょう。

・佐藤栄作元首相がもし仮に造船疑獄事件の時に逮捕されていたら、非核三原則(持たず、作らず、持ち込ませず)や沖縄返還協定締結、日本人初のノーベル平和賞受賞は悲願の達成に至っていなかったかも知れません。歴史とは面白いものですね。

検察官とは、検事副検事を指し、法律違反者に対し裁判や違法容疑を仕掛ける役職を担います。日本司法体系の重要ポストです。民事裁判の場合は原告が存在しますが、刑事裁判の場合は検察が同等の対応関係に布置されます。警察等は捜査能力、捜査可能性には特化的に優良ですが、実際問題、裁判起訴可能な人種は日本国司法体系の中に検察官のみで、非常に枢要的な役職です。検察官や検察事務官は基本的に検察庁に内在勤務し、東京都では東京地検特捜部が著名です。特別捜査部(特捜部)は通例的に、政治家汚職事件大型脱税等を司法対象に同定します。


参考文献:『造船疑獄事件/Wikipedia』 
     『【日本史】歴史上唯一の政治介入!内閣総理大臣が法務大臣の指揮権発動で検察の捜査を阻止させた「造船疑獄事件」とは!?

(文責:Masaharu Sumida @miyabi_media)

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